全部私ひとりでやってきました。親が倒れたら、この子の生活はどうなりますか。
相談内容
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60代のお母さんと、30代の知的障害を抱える息子さん。
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息子さんは療育手帳を持ち、現在は「就労継続支援B型事業所」に週5日通所している。
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「障害福祉サービス受給者証」や「障害基礎年金」の手続き、事業所とのやりとり、自立支援医療の申請・更新などを、すべてお母さんが一人で担ってきた。
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持病が悪化し、「自分が倒れたら、この生活は一日で止まる」と強く不安を感じるようになり、弊所に相談された。
相談者が困っていること
お母さんの頭の中には、障害福祉サービス受給者証の更新時期、就労継続支援B型の担当者名、障害基礎年金の更新、自立支援医療の有効期限、主治医の名前や病院など、生活を支える情報がすべて入っていました。一方で、その情報は形に残しておらず、相談支援専門員や親族ともほとんど共有されていませんでした。
「親なき後が不安なのに、どこから手をつけていいか分からない」という思いと、「今さらこんな基本的なことを人に聞くのは気が引けて」と感じてしまい、長年一人で抱え込んでこられたそうです。
弊所が行ったこと
1 使っている制度を一緒に書き出す
最初に、お母さんの頭の中にある情報を、口頭で聞き取りながら一つずつ紙に出していきました。「障害基礎年金はいつから、どの口座に入っているか」「障害福祉サービス受給者証には、どのサービス(就労継続支援B型・短期入所など)がどれくらい支給されているか」「自立支援医療はどの病院で使っているか」「相談支援専門員は誰か、市役所の担当部署はどこか」といったことを、思い出していただきながら整理しました。
ここでは、細かい制度用語だけでなく、「誰に連絡すれば動いてくれるのか」「何を止めたら生活に困るのか」という視点で優先順位をつけました。お母さんが「これは大事」「ここは正直よく分かっていない」と感じている点も一緒にメモし、「分からないことを分からないと言っていい場」にすることを意識しました。
2 一枚の「情報シート」にまとめる
次に、書き出した内容を、A4一枚の「情報シート」に整理しました。主な項目は、次のとおりです。
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本人情報:氏名、生年月日、住所、手帳の種類・等級
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利用中のサービス:就労継続支援B型事業所名、短期入所事業所名、その電話番号と担当者名
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年金・手当:障害基礎年金の種別・等級、受給開始時期、次回の診断書提出時期の目安
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医療:自立支援医療の対象となっている病院名と診療科
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相談先:相談支援専門員の事業所名と担当者、市役所障害福祉担当の連絡先
「見れば誰でも分かる」ように、略語だけでなく簡単な説明もカッコ書きで添えました。このシートはお母さんにお渡しし、相談支援専門員や信頼できる親族にも渡せるよう、必要な分を一緒に用意していきました。
3 役割を分ける段取りを一緒に考える
情報を整理しただけでは、お母さんの負担はすぐには減りません。そこで、「どの場面なら、お母さん以外の人が動けそうか」を一緒に検討しました。具体的には
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障害福祉サービス受給者証の更新時期を、相談支援専門員と事業所にも共有し、早めに声かけしてもらう。
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就労継続支援B型の利用日変更や送迎調整などは、可能な範囲で、本人と事業所の職員が直接やりとりする場面を増やす。
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病院の付き添いについても、「毎回お母さんが行く」のではなく、場合によってはヘルパー事業所や親族に相談する選択肢があることを確認しておく。
といった「小さな分担」から始めました。いきなり大きな変更をするのではなく、「この部分だけでも他の人に任せてみる」というステップを区切ることで、お母さんの不安を減らしながら進めるようにしました。
結果
自分の頭の中にだけあったことが紙になって、何をどこに頼ればいいかが、ようやく整理できた気がします、とお母さんは話していました。もしものときに相談支援専門員や信頼できる親族がこの紙を見て動けると思うと、少し肩の力が抜けました、ともおっしゃっていました。
制度上は本人が受給者になっていても、実務は親が一人で抱えている、というケースは少なくありません。親や家族の頑張りだけに頼るのではなく、制度や支援者に少しずつ役割を渡していくことが、結果として本人の暮らしを守ることにつながると考えています。弊所は、その「バトンの渡し方」を一緒に考え、目の前の手続きだけでなく、これからの生活全体を見通せるようにお手伝いしていきたいと思います。
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