本人に代わって預金を引き出す権限

2023年10月24日

本人の預金を家族が引き出してもいいですか?

 

通帳とキャッシュカードのイラスト

 

相談内容

・50代の女性からのご相談。

 

・父親は80代、弟は40代で統合失調症を患っている。父親と弟の二人暮らし。相談者は夫と20代の息子(知的障害を抱えている)の三人家族。

 

・父親が高齢者施設に入ることになった。弟の今後の生活については、障害サービスの相談員と話し合って決めていく。

 

・これまで生活費の管理は父親が行っていた。今後は相談者が行っていく予定。

 

 

 

 

 

 

相談者が困っていること

・父親や弟の預金口座から私(相談者)がお金を引き出してもいいのか。二人とも「引き出してもいい」と言っている。

 

・知的障害を抱える息子の口座からは、母親である私(相談者)がお金を引き出している。

 

・これまでは深く考えたことはなかったが、父親や弟、息子の口座から家族が預金を引き出してもいいのか。法律違反などで罰せられることはないのか。

 

・インターネットで調べてみたが、よく分からなかった。

 

・父親や弟、息子の口座がある金融機関には、家族が預金を引き出すことについて確認はしていない(本人以外の人間が預金を引き出すことがダメだった場合、これまで息子の口座から預金を引き出してきた手前、いろいろ指摘されるのが怖い)。

 

 

 

 

 

 

弊所が考えたこと、行ったこと

・本人の口座から家族がお金を引き出してもいいのか、金融機関に確認しました。

相談者の父親、弟、息子の口座がある金融機関のいずれも「本人を代理する権限がないと預金を引き出すことはできません」という返答でした。

 

 

 

・本人の口座から家族がお金を引き出してもいいのか、弁護士に確認しました。

・本人を代理する権限がないのに行う行為を「無権代理」と言い、民法上、原則無効となります。ですから金融機関は「本人を代理する権限がないと預金を引き出すことはできません」という返答をします。

 

 

しかし、この「無権代理」(民法)に罰則があるわけではありません。

 

また、家族が本人の預金を引き出しても、刑法に問われることもありません。これは刑法244条の「親族相盗例(しんぞくそうとうれい)」を根拠にしています。

 

 

親族相盗例とは「一定の親族間で、特定の罪を犯した場合に、その刑が免除される」というものです。

 

※一定の親族とは配偶者、直系家族、同居の親族を指します。

 

※特定の罪には「窃盗罪(他人の口座から勝手にお金を引き出す)」も含まれます。

 

 

 

 

・相談者に金融機関と弁護士から伺った話を伝えました。

金融機関は「家族でも本人でなければ預金を引き出せません」と言いますが、本人が認知症を患っていたり、障害を抱えていて自分でお金をおろせない時は、特に罪に問われることもないので家族が本人に代わってお金をおろしている、というのが日本の現状です。

 

だからといって、本人に代わって家族が本人の口座からお金を引き出してもよい、ということではありません。よい、悪いではなく、正確な事実に基づいてご判断ください。

 

 

 

・金融機関がが言う「本人を代理する権限がないと預金を引き出すことはできません」の本人を代理する権限について説明しました。

 

本人を代理する権限とは「成年後見制度」です。

 

https://guardianship.mhlw.go.jp/

 

成年後見制度の概略について説明を行いました。

 

 

 

 

 

 

結果

・相談者は地域の成年後見制度相談窓口に相談に行かれました。

 

・父親、弟、息子の三名の相談をしました。

 

※弊所が行った支援は、地域の成年後見制度相談窓口の紹介、相談日程の調整、窓口担当者へ父親、弟、息子の情報及び相談したい内容を事前にお伝えしたことです。

 

 

 

 

 

 

これから

本人を代理する権限がない家族が、本人の預金を引き出すことはグレーゾーンです。くれぐれも慎重なご判断をお願いします。

 

成年後見制度の需要は増えていますが、受任できる専門職はまだまだ少ないです。現在弊所でも成年後見制度の受任ができるように準備を進めています。

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